紹介:無職転生

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Overview

小説家になろうの圧倒的人気作といえば無職転生。現在では人気累計ランキングで1位の座から3位にまで落ちてしまいましたが、長らく1位に君臨していただけのことはある作品です。

小説家になろうに掲載された日付を考えると、他作品と比べてだいぶ遅れましたが、2021年冬シーズンにアニメ化が決まりました。しかしそれだけアニメ制作陣も力を入れており、無職転生のためだけに制作会社を設立する程です。実際アニメを見てみれば、アニメーションが非常に丁寧に書き込まれており、名画を引用した綺麗な背景、滑らかな動作が魅力的です。それだけアニメに力を注ぐのは、無職転生の原作が駄作ではなく、名作だからこそアニメでも名作にしようという心意気なのではないでしょうか。

無職転生のメディアミックスはアニメ化だけではなく、漫画化も行われています。漫画は既に学園編まで進んでおり、絵が綺麗で漫画としても読みやすく面白い作品になっています。

またヒロインの一人である長寿のロキシーを題材とした漫画も出版されています。内容は無職転生主人公のルーデウスと出会う遥か前、ロキシーが魔法大学に通う頃となっています。

項目5段階評価点
シナリオ★★★★★
キャラクター★★★★
独創性★★★★★
文章の読みやすさ★★★★★
要求読解力★★

現在の小説家になろう累計期間人気ランキングTOP10の中で一番好きな作品。シナリオは「六面世界の物語」本編の前日譚の位置づけらしいが、前日譚のくせに非常に規模が大きく内容が濃い。本作はルーデウスの生涯をかけた話だが、前日譚なのでルーデウスの話としては完結するが、「六面世界の物語」としては完結していないほどの規模。 キャラクターを深堀りするエピソードも面白く、だいたいのキャラが人間臭い。でも個人的に愛着が湧くようなキャラが居なかったのが残念。

独創性は魔法に関しては今でこそありふれたものなので評価がしにくいが、世界観や設定は独創的で好奇心をくすぐられる。

文章はあまり癖がなく読みやすい。特に難しい話の構図や心理描写などが無いので気楽に読める。

無職転生には外伝無職転生 - 蛇足編 -があります。そこにはアイシャ編「アイシャがメイドを辞める時」が存在しました。現在は削除されており、削除される前に何回も改稿を繰り返していたため、どのタイミングの内容かは不明ですが、魚拓で読むことが可能です。なぜ改稿を繰り返した挙げ句、削除になったか。それはアイシャ編は賛否両論で議論が大きくなりすぎたためです。

以下はネタバレとなりますが、

本編でアイシャは完璧人間として描かれていました。その度はいきすぎており、姉妹のノルンにすら不完全であることを侮蔑するような素振りがありました。アイシャ編では他者の不完全性を認め、自身も不完全な人間を自覚するようなエピソードとなっています。またルーデウス自身も彼女らの行動から過去と向き合い家族に前世を打ち明け、それぞれが成長するエピソードとなっています。 それだけならば特に問題が無さそうですが、題材が万人受けしませんでした。題材が26歳のアイシャが11歳の甥でルーデウスの子供のアルスと駆け落ちしたことだからです。また、そのまま1年以内にアルスの子供を出産しました。

作者が作中のヒロインは3+1で、1をアイシャと言っていたこともあり、アイシャファン達が憤怒してしまい大いに荒れました。エピソードの意図を汲み取った肯定派とルーデウスに自己投影してアイシャが寝取られたと感じたファンの否定派が生まれ、問題の沈静化のために改稿と削除と至りました。

ここで否定派の中に近親相姦を理由に挙げる人も居ますが、あくまでファンタジーであり現代倫理観を振りかざすのはおかしく、それは建前だと思っています。もし現代倫理観での批判を良しとするならば、アイシャ編よりも以前にあった、奴隷制度と奴隷売買についても現代倫理観の観点から批判しているはずです。奴隷なんて現代倫理観でいえば間違いなく忌避されるべき内容ですしね。しかし奴隷についての話は完全スルーで、アイシャ編についてのみ唐突に現代倫理観を振りかざしており、現代倫理観を建前にアイシャ編を批判したいだけと推察せずにはいられません。エピソードを無かったことに、あわよくばルーデウスとくっつけて欲しかったのではないでしょうか。

ともあれ、お蔵入りしてしまったアイシャ編のある外伝無職転生 - 蛇足編 -も忘れずにチェックしてみてください。