感想:サーザンエンド辺境伯戦記

Share on:

Overview

戦記だが魔法や亜人などのファンタジー要素はない。その代わりに、なろう作品には珍しくマスケット銃や大砲が一般流通した状態で登場する。歴史小説のような趣の小説。

文章は風俗や風土、権力、家系などの描写が非常に多い。脇役の家系説明もするが、特に序盤は8世代を遡って歴々の当主について述べていて、充実しているというより過剰気味。

設定の記述を少しは後書きに退避しているとはいえ、かなり設定モリモリ小説。会話文が殆ど存在しない場面もままあるほど。 そのような物語進行以外の描写が多いため、物語の進展が遅い。更に序盤は盛り上がり場面や主人公の見せ場が殆ど無いまま、主人公が劣勢の状態で8,90話まで進行する地味具合。

また様々な組織新設にあたって人事采配するだけでも数話割かれたりして、やはり黙々と架空歴史小説を読むような印象を受ける。作品評価は明らかに万人受けはしないが、戦記というより歴史小説のような類を好む人には刺さりやすい。

主人公は優柔不断で甲斐性が無い。失敗することや癇癪を起こすことが多いし、戦記なのに戦上手というわけでもない。

主人公の魅力といえば権力を安定させるための人事采配を頑張るところぐらいだ。自身に都合の悪い人材をあわよくば戦争で討ち死にさせようと画策したりする。また実力者で権力をあまり持たせたくないものの、閑職に追いやることもできない臣下をどうするか、そういった権力バランス調整が泥臭くももあり、リアリティーを生み出し作品の魅力となっている。

タグには存在しないハーレムだが、主人公は第三夫人まで増加するし序盤に複数の女性キャラと旅に出るためハーレムっぽさがあるが、そのうちのキャラを政略結婚の捨て駒として切り捨てたりする。安易なハーレムというわけではない。良く言えば合理的判断が出来る、悪く言えば人情味がない。大切な人を切り捨てる割に不要な敵を見逃し危機に陥るので、常に合理的判断が可能なキャラというわけでもないのがキズ。

備忘録程度だが第一夫人は鬼軍曹、第二夫人は包容力、第三夫人はツンデレ枠。世界観的には第四夫人まで増えうる。

個人的にとても気になった展開は、主人公が皇帝に伯に叙され領土を得たにも関わらず、時間も経たぬまま同じ帝国領の男爵が兵を率いて武力で攻め入ってきたこと。皇帝への反逆にしか思えない行為で正気じゃない。武力行使でも勝てばやりようがあるという説明だったが、男爵は敗北して退却したのに問題化しないって…。そもそも武力行使で勝てばOK風潮だと、帝国は内乱だらけなのでは。

1破産した帝国騎士レオポルドは、不意に現れた異民族の美女キスカに誘われ、南部辺境サーザンエンドの継承戦争の渦中へと飛び込む。
2金もない。地位もない。権力もない。地盤もない。知名度もない。軍隊もない。ないない尽くしの状況からカリスマに欠け、特別な能力もない主人公が莫大な借金を抱え込みながら成り上がっていく近世風異世界戦記。
3騎士の時代は遠く過ぎ去り、戦場の主役は銃と大砲に移りゆく頃。政治や経済、外交、陰謀などのごった煮。

https://ncode.syosetu.com/n0588q/